Runway Gen-3 Alpha、OpenAI Sora、Kling AIなど、最新の動画生成AIにおいて、プロンプト(指示文)の単語を並べる順番は、動画のクオリティと意図の再現性を決定づける最重要ファクターです。
以前言われていたような「文字数制限で切られるから」という単純な理由ではなく、現在は**「AIの推論プロセス(全体から細部へ)」**という技術的特性により、文頭の重要性がかつてないほど高まっています。
本記事では、最新技術仕様に基づいた「失敗しないプロンプトの書き順」を解説します。
1. なぜ最新AIでも「文頭」が絶対なのか?
最新の「Diffusion Transformer(DiT)」モデルは、長文のコンテキストを理解できますが、映像を生成する際に以下のプロセスを経ます。
- Global Composition(全体の構図決定)生成の最初期段階で、映像の「枠組み(カメラ位置・画角・スタイル)」を決定します。
- Local Details(細部の描画)確定した枠組みの中に、人物や背景を描き込んでいきます。
「文頭にある言葉」はこの第1段階(構図決定)で最も強く参照されます。
特にPOV(一人称視点)のような特殊な構図は、ここで強力に指定しないと、AIは学習データの大多数を占める「三人称視点(映画のような客観的な構図)」へと勝手に流れてしまいます。これを防ぐには、文頭での強制指定しかありません。
2. 推奨される「黄金のフォーマット」(2025年版)
RunwayやSoraの公式ガイドでも推奨されている、最も確実な構成順序は**「ショットリスト(撮影指示書)」形式**です。
推奨順序
- カメラワーク・視点(Camera & Angle) <span style=”color: red; font-weight: bold;”>← 最重要!</span>
- 被写体とアクション(Subject & Action)
- 環境・照明・スタイル(Environment & Style)
なぜこの順番か?
- 文頭 (1):AIに「どんなカメラで撮るか」を認識させ、三人称バイアス(客観視点になりがちな癖)を上書きします。
- 中間 (2):確定したカメラアングルの中に、被写体を配置し、動作させます。
- 文末 (3):映像全体のトーンを整えます。最新AIは文脈保持力が強いため、環境描写は後ろに配置しても十分に反映されます。
3. POV成功のためのプロンプト比較
「森で懐中電灯を持って歩く」シーンを例に、記述順序による成功率の違いを比較します。
× 悪い例:アクション先行型
“A man walking in a dark forest, holding flashlight, highly detailed, POV shot.”
- AIの解釈:「まずは『歩いている男』を描画しよう(三人称)。……最後にPOVとあるが、もう構図は決まってしまったので無視(忘却)しよう。」
- 結果:男性の背中を追う三人称映像になりやすい。
◎ 良い例:カメラワーク先行型(Runway/Sora推奨)
“POV shot, Handheld camera movement: walking in a dark forest, holding flashlight…”
- AIの解釈:「まずは『POV・手持ちカメラ』の構図を用意する。全身は描かない。その条件下で、森を歩く描写を生成しよう。」
- 結果:確実に主観視点で、揺れのあるリアルな映像になる。
4. 構成テンプレート(コピー用)
最新AIの「コンテキスト保持力」を活かしつつ、構図ミスを防ぐための型です。ご自由にお使いください。
| 順序 | カテゴリ | プロンプト例 | 役割 |
| 1 | カメラ・視点 | POV shot, GoPro footage, Fisheye lens | 【構図確定】 AIの「三人称バイアス」を最初の一撃でブロックする。 |
| 2 | アクション | frantically pouring water | 【主要素】 構図の中で何が起きるかを即座に記述。 |
| 3 | 被写体詳細 | visible male hands, splashing water | 【細部】 具体的に映るパーツ(手など)を指定。 |
| 4 | 環境・演出 | kitchen background, moody lighting | 【背景】 後ろに回しても最新AIなら十分理解する。 |
まとめ
- 最新AIは長文を読めますが、「映像の土台(構図)」を決めるのは依然として最初の数単語です。
- 特にPOVは、AIにとって「特殊な例外」であるため、プロンプトの最初の5単語以内で宣言しない限り、高確率で失敗します。
- **「カメラの設定(視点)を決めてから、中身(アクション)を撮る」**という映像制作の基本順序は、生成AIにおいても不変の鉄則です。
